連棟長屋の建物を解体する場合
一言で不動産と言っても、商業用ビルやら分譲マンションの様な区分所有、はたまた一般的な一戸建て等、様々な種類があります。皆さま日々過ごしている中でそんなことイチイチ気にして町を歩いていませんよね?そんなたくさんある不動産の中でも、不動産取引をする際に非常に注意しなければいけない物件があります。「連棟建て物件」です。
簡単に言うと木造文化住宅のような長屋ですね。
今の時代は建設が少なくなりましたが、昭和40年代から50年代にかけて非常に多く建設されておりました。もともと、ワンオーナーが賃貸収益を得るために一棟丸ごと所有しているものは問題ないのですが、昔はこの連棟物件を縦に線引きをして、その住んでいる真下の土地を分筆して個別の所有権として販売しているものもありました。もちろん建物は老朽化していきますので、いつかは解体しないといけないのですが、このように個別で所有していて解体したい場合、全部を解体するわけにはいかないので、所有権のある一部だけ解体するこ事になります。これが、かなり大変な作業なんです。
個別で所有権を持っているからと言って、建物自体は一体の建物です。
一戸を解体するという事は、長いカステラを何等分かにして、間を食べるような形になります。カステラのようにサックリと包丁で切れて、切り口も綺麗・・・であれば問題ないのですがそうはいきません(笑)。間を何も考えずに解体すると両端の家は柱も壁も無くなり、「8時だよ全員集合」のカキワリのような事になってしまいます(笑)。というか解体するという事は、両隣の柱を残すか新設するか、壁を新たに作らないと一緒に崩れてしまいます。ということで、解体前に柱を残したり補強したり壁を新設するというような準備をして解体を行います。無事解体が終わり、歯抜けのようになった土地は問題が無くなったかと言うとそうではありません。
連棟を解体した土地を取引する場合、重要事項説明書の作成と調査には非常に神経を使います。
なぜかというと、例えば解体した建物と両隣の建物の通し柱は共有している場合がほとんどです。そのような場合、その通し柱は撤去せず残しておくのが通例です。共有しているという事は土地の境界上に柱が乗っているという事なので、解体した土地には、両隣の柱やら軒が越境してきていることがほとんどです。
勿論そうなりますよね。隣地の土地に侵食して解体するわけにはいきませんからねぇ。。。
ですから、重要事項説明書には「隣地の建物が相互越境している可能性があります」と言うような文言を謳っておかないと、知らずに買ってその土地に新築の一戸建てを建てる際に大きなトラブルになることがあります。
理想は、そのような土地を購入する場合は測量をやり直して、隣地立ち合いのもと、境界明示をして、隣地との相互認識の上で取引した方が後々のクレーム回避になりますよ。
越境の問題に次いで、気を付けておかないといけないのが、ライフライン特に上下水の引き込みの有無です。
昔の連棟建ては、本管(道路に入っている管)から一カ所だけ本管割り(本管から敷地内に入れる枝)をし、後、戸数分だけ敷地内で分割してメーターだけ個別に付けている場合が多いです。そのような引き込みになっている場合は、その旨もしっかり重要事項説明書に記載するべきですよね。自分の所に給水や排水する管が他人地を通っているのですから。。
新築の際、別に引き続きその敷地内配管を使ってもいいんですが、昔のものなので管が細いです。そこに3階建てを新築し三階にまで給水するような間取りにすると水圧が弱くなってちょろちょろとしか水道水が出ないようになったり、自分の家以外の水圧が弱くなり、周りから大クレームを引く可能性があります。なので、多少費用は掛かりますが、新築の際は自分の家の前から本管割をして他の家とは別の新設管を引き込みましょう。
不動産業者の皆様もこのような住宅建設以外の費用も掛かってくるという旨を買主様に十分理解して頂いた上で、重要事項説明書をきっちりと作成して、慎重に取引を行ってくださいね。面倒くさいかもしれませんが、そういったクレームを一つ一つ解決していくのが営業売り上げを上げるためには重要です。急がば廻れです(笑)