本末転倒~誰を護る書類なのか?
皆様が不動産を購入する際には、不動産売買契約書に署名・捺印する前に重要事項説明書の説明を受けて十分に納得・理解した上で契約することと思います。
そもそもこの「重要事項説明書」とはご購入される不動産について、お客様が理解できていない事柄を不動産業者の立場から解りやすく説明する義務があります。
例えば、建物の建て替えをする際にはどのような制限があるのかとか、前面道路の種類や状況、建て替えの可否など、本来は『お客様が不利益を被らないために事前に十分に理解を促す』ための書面です。
住宅産業・不動産業はクレーム産業であります。
ご購入された後に、「そんなの聞いてなかった!」「不備がある!売主負担で修理しろ」などのクレームは山ほど出ます。何事も起こらない取引の方が珍しいですし、クレームを引いたことのない営業マンはいないと思います。
本来、重要事項説明書とはこのようなクレームが出ないように、不動産業者は細かな所まで注意して調査し、記載しなさいよという意味合いの書類なのですが、ここ5年ほどこの重要事項説明書の記載内容が極端に増え、昔の3倍位の厚みになっております。
ちょっとしたエッセイ集位の厚みですよ(笑)
なぜかというと、当然、クレームの蓄積データを基に宅建協会が雛形を修正・加筆することが増えたり、法改正により説明義務の項目が多くなっているのものも一つの要因ですが、大きな要因に大手不動産業者による自発的なクレーム回避文言が大量に加わった事が考えられます。
クレームの数の急激な増加により、大手不動産業者が「クレームの先回り」をしているのです。
本来、お客様を保護するための重要事項説明書が、仲介会社が自分たちの身を守るための重要事項説明書になってしまっているのが現状です。
簡単に言うと・・・
- 「事前に説明しました」
- 「記載してあります」
- 「理解頂いた上、署名、捺印を頂きました」
という事が言いたいのです。
裁判に負けないために。
不動産取引ではただでさえ購入者の立場が強く、不動産業者の立場が弱いです。
それに加えて、重要事項説明書の内容が不十分であれば一方的に負けてしまいますし、高額な商品ですので損害賠償の額も大きいです。それを回避するために、大手不動産業者は自ら防御しているのです。それにしても、こんな内容の文章いるか?という物が多々あります。
- 「本物件は半径100m以内にゴミ焼却施設がございますので予めご了承下さい。」
- 「本物件は○○川から直線距離100mの所に位置しており、万が一不測の大雨等、自然災害が発生した場合、浸水する可能性がございます。」
- 「本物件北側50mの所に反社会的勢力の事務所がございます。」
- 「本物件の西側は空き地になっておりますが、将来にわたり日照を保証するものではございません。」
などなど。
びっくりしますよね!ここまでくると(笑)
同業者でも「ここまで書くか~?」と目を疑うことも珍しくありません。
いったい誰のための重要事項説明書なのでしょうか?
それを明確にしなければ、意味のない不動産業者の責任逃れのためだけの分厚い重要事項説明書になってしまいます。後、10年後位には辞書位の分厚さになっているかもしれませんね(笑)
近年、テレビでも不動産でも家電でもなんでもかんでもクレームを付ける方がいらっしゃいます。
あまりクレームを付けるのもいかがなものかと思います。クレームを付けられた相手も馬鹿ではないので、防御策を考えます。テレビにしてもクレームにより、放送が自粛され、どんどんつまらなくなっていますよね。これと同じで、クレームが回りまわって自分たちの首を絞めないよう、公正で前向きな不動産取引を望む今日このごろです。